お品書き

薬味の効用

大根

さっぱりとした口当たりが食欲を増進すると共に、含まれているジアスターゼが消化を助けます。「大根役者」という言葉があるように当たった試しがない、食あたりの予防もします。また、皮に近い部分に含まれているビタミンPが血管を強め、高血圧や脳出血を防ぐので、そばの同じような効用と合わさってその作用をさらに大きくします。大根おろしの中のビタミンCは、微量ではあるが、そばのルチンとともに体内で活用されますので、その効率をお互いに高め合い血管がもろくなるのを防ぎます。中高年の人や高血圧症の人々には良い取り合わせです。

ねぎ

葱特有の硫化アリル(アイリン)は、ビタミンB1の効果を著しく高めます。特にこのアイリンは揮発性ですので生の刻みねぎを用いている薬味は、その知恵が生かされているわけです。そばはビタミンB1の含有量の多い食品ですが、薬味に添えられたねぎを一緒に食べる事によりB1の吸収をよくし、無駄なく利用されます。そばの効用と合わせて、疲労回復や冷え性、強肝作用などが薬味のねぎによっても高められます。またねぎは、体を温める作用を持ちます。そばと共に食べることにより、体を温め、内臓の働きを盛んにし、血液の循環を良くする効果を持ちます。

やまいも

山いもは日本特有の食品で、糖質、たんぱく質、ビタミンB郡・C、ミネラルのほか、ムチンと呼ばれる粘液質、ジアスターゼとよばれる消化酵素、コリン、サポニン等が含まれています。山いもが、ずばぬけて消化が良いのは、大根の3倍もあるジアスターゼの効果です。
また、山いもは昔から「山のウナギ」といわれるほど精がつくことで知られています。これはオクラ、なめこ、ウナギなどと同じくヌメヌメのもととなるムチンの効用で、この成分がたんぱく質を無駄なく活用させるため、滋養、強壮に良いといわれています。

鶏卵

良質のたんぱく質を含む完全食品で、ビタミンC以外の成分がすべて含まれています。鶏卵のたんぱく質は、アミノ酸との組み合わせが非常に良く、そのたんぱく価は食品中でもトップで、消化吸収にもすぐれています。
卵黄にはビタミンA・B1・B2、鉄、リンが、卵白はほとんどが動物性たんぱく質で、ビタミンB2も含まれています。以前はコレステロールが多く、常食すると動脈硬化症の要因になるといわれていました。しかし、卵黄に含まれるレシチンが脂肪を乳化させる作用があるため、血中コレステロール値を正常に保ちます。
卵は牛乳と並んで、栄養のバランスに富んだ食品です。普段の食事では不足しがちな必須アミノ酸のリジン、トリプトファンが豊富なうえ、大豆のたんぱく質には望めないメチオニン(アミノ酸)は肝臓の解毒作用に効果的です。

蕎麦食法

最初にちょっと、ツユの濃淡を見定めておき、好みに応じてツユを適当につけるのだが、薬味は二箸目から用いるものと古人は訓えている。蕎麦を猪口の中でかき回したり、こね返したりしないこと。猪口は必ず手に持つこと。ツユは時々つぎたす物で、最初から景気よく猪口につがず、終いまで同じ味で楽しむこと、蒸籠に食べ残しの汚いさまを見せないこと、余事乍ら傍目にも旨そうに食べているように見える心得も必要であろう。そばは飯を食べるのとは違うことはもちろんだが、呑むものの代表は夏目漱石の小説「吾輩は猫である」に登場する迷亭の食べっぷりだが、敢えてこれをまねる必要はない。十七世紀末、霊元天皇は上皇となられてからも公卿方を召されて、蕎麦会の催しをなされた。その席には信任厚かった歌道の家系として有名な風流人冷泉為久卿も侍ったに違いないが、その頃の食べ方としては、椀に盛られた蕎麦を箸でちぎって、ツユをつけて食べたように察せられる。この時のことではないが、古書に「さもなくしては醜く候」とあるところを見れば、時と所とによっては、こうした食べ方もあったようである。東北には「はじめツルツルあとカメカメ」と言う事があるが、これは一種の祝い言葉と見て差し支えない。

そば粉の種類

蕎麦は様々な名称で呼ばれる。例えば「御前蕎麦」「田舎蕎麦」。前者は白い蕎麦、後者は黒っぽい蕎麦を言う。それぞれ、味、香り、舌ざわりなどが異なる。これが、大名など上流階級の蕎麦の区別にもなっていた。それが、「更科」系、「薮」系など蕎麦屋の屋号の起こりになっている。これらは大ざっぱな分け方で、一般には石臼で引いて蕎麦粉をとる方法で次のように呼んでいる。

  • 1

    製粉にかかる前に、貯蔵してあった玄蕎麦(殻付のもの)を庭に広げ、天日で十分乾燥させる。

  • 2

    次に「角おし」(みがきとも言う)といって、泥、屑等を除く。屑は、主に三角形の蕎麦の実の一角に着いているヘタである。これが蕎麦粉に混じると風味を落とす。更に篩で玄蕎麦を大・小に分ける。

  • 3

    この玄蕎麦を石臼で粗挽き(引き抜き)すると、黒い外皮がはがれる。同時に、蕎麦の粒の形を保ったもの(丸引き)と、大きく割れたもの(割れ)、五つ位に割れて2ミリ程の粒になったもの(上割れ)ができる。また、粒が割れたときに出る粉を「花粉」といって、蕎麦を打つときに振りかける「打ち粉」に使う。これは「更科粉」に劣らない良品である。花粉は見た目には白いが、水で溶くと黒っぽくなる。

  • 4

    「上割れ」は全体の三割ほど出るが、これだけを選別して挽いたものが「更科粉」で、この粉だけで蕎麦を打つと真白な「更科蕎麦」になる。

  • 5

    「上割れ」を除いたもの(「丸抜き」と「割れ」)が並の蕎麦粉の原料になる。まず最初に軽く挽いたものが「一番粉」で、これも色の白い粉である。

  • 6

    更に挽いて篩ったものが「二番粉」。

  • 7

    残ったものをもう一度挽いたものが「三番粉」。最後に残ったものが「した粉」で、蕎麦の甘皮の部分。

  • 8

    一番粉は旨味もあり、香りも良く、甘みのある蕎麦ができるが、粘りが少ないので、蕎麦切りを作るには高度の技術が要求される。二番粉以下がいわゆる「田舎蕎麦」といわれ、香りと歯ごたえと、蕎麦独特のアクの強さを売り物にしている。

  • 9

    以上から分かるように、蕎麦は色が濃いから蕎麦粉を多く使っているとは言えない。白い蕎麦も、黒い蕎麦もそれぞれ持ち味がある。それらを味わい分けることのできる人が本当の『蕎麦通』である。